直象
読み方:ちょくしょう
定義・説明
物理的には存在しない事象や情景が、言葉・身体・音・空間などの働きによって、受け手に直接的な体験として立ち上がる現象。対象が実在しないことを認識していながら、単なる説明や想像を超えて「そこにある」と感じられることを指す。
用例・具体例
舞台上で俳優が「海が見える」と語る。劇場には海も映像も存在せず、観客もそのことを理解している。しかし俳優の声、身体、視線、間、舞台空間などが作用することで、観客は舞台の向こうに海が広がっているように感じる。観客ごとに思い浮かべる海の姿は違っていても、同じ場所に「海」が立ち上がる。
既存概念との違い
直象における「直接」とは、媒介が存在しないという意味ではない。俳優の発話や身体、音楽、言語などを介していても、受け手にとって対象が直接現れたように経験されることを意味する。 直象は一人でも成立しうるが、演劇や音楽のように複数人が同じ場を共有する状況では、共通の対象として成立しやすい。各人が経験する具体的な像は必ずしも一致しない。 また、直象は視覚的な像に限らない。朗読によって場所の気配が生じたり、歌唱や演奏によって実在しない情景が現れたりすることも含みうる。 「表象」は対象を記号やイメージによって表すことに重点があるのに対し、「直象」は受け手に対象が現れているように感じられる体験に注目する。 「錯覚」とは異なり、受け手は対象が物理的に存在しないことを認識している。 「想像」とも重なるが、直象は意識的に情景を思い描く行為だけでなく、表現や場の働きによって情景が立ち上がるという受動的・直接的な感覚を重視する。
関連概念
表象、現象、現前、間主観性、想像、演劇的虚構、純粋経験
提案者:tae
概念の庭での初回公開:
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